私は以前、虚血性大腸炎になったことがありました。そのときの総合病院の治療が入院せず、薬も飲まずでした。つまり5日間のファスティングでした。結果それだけで治ったので、内臓を休める、治癒力を高めるのだと体感しました。このファスティングについての医学的根拠と健康の効果について解説します。
1. ファスティングとは
ファスティング(断食)とは、一定期間食事を控えることで、身体の機能、特に内臓を休ませ、自然治癒力を高めることです。
1.1ファスティングの種類
断続的ファスティング、間欠的ファスティング、完全ファスティングなど、様々な形態があります。また様々な種類もあります。
・インターミットファスティングは、日中の時間帯を食事制限し、夜間や休息時間を長く取る方法です。
・ロングファスティングは、2~3日間以上の時間をかけて断食を行う方法です。この方法は、内臓の働きやデトックス効果が期待されます。
・ミネラルファスティングは、水やミネラル摂取を行う方法です。つまり栄養不足を防ぎながら身体をリセットします。
・フルファスティングは、一定期間食事を一切摂らない方法です。つまり身体の蓄えたエネルギーを消費します。
1.2 歴史的背景
古くから(紀元前のころ)、人間の習慣として、世界各地の文化や宗教の中でおこなわれてきました。例えば、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、仏教などもそうです。つまり多くの宗教において断食は重要な儀式とされ行われています。
1.3 効果的な実践方法
効果的に行うためには、次のような点に注意することが重要です。
- 個人の身体的、健康状態に考慮し、適切な期間と方法を選択する
- 脱水や低血糖などの副作用を防ぐために、水分や電解質の補充をする
- ファスティング中および復食時の食事内容と量を適切に管理する
- ストレスを溜めすぎないよう、十分な休養を取る
2. ファスティングの医学(科学)的根拠
ファスティングの科学的な根拠については、多くの研究や論文があります。
医学的根拠の一つとして行われています。それは病院などの医師の指導の下で無理のない適度なメディカルファスティング(断食)です。
断食療法の適応症は広く、心身症や神経症、不眠症をはじめ、慢性胃炎、過敏性大腸症候群、過呼吸症候群、心因性気管支喘息、メニエール症候群、動揺性高血圧、更年期障害、自律神経失調症、関節リュウマチ、肥満などの疾患がある。一方、禁忌としては肺結核、心筋梗塞、心不全、脳血管障害、腎不全、悪性腫瘍、潰瘍などがある。引用:Wikipedia
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の一部門である、アメリカ国立老化研究所の医師で神経科学者マーク・マットソンは、25年にわたって間欠断食の健康影響を調査した。動物実験とヒト研究から、絶食と摂食の時間を交互に繰り返すことで、代謝スイッチと呼ばれるいにしえの食糧不足への適応反応を惹起することにより細胞の健康をサポートすることが示唆されている。引用:Wikipedia
2.1 断食療法について
食べ物を一定期間摂取しないで病気を治療するという方法です。つまり医学界でも「絶食療法」として評価されています。
例えば、欧米では肥満症の治療として、ロシアでは、精神病患者に対する治療として、日本も心身症の治療に応用されてることがあります。
古くから宗教の儀式として行われてきました。それが現在では、医療的効果があることが認められ研究されています。
2.2 オートファジー(細胞の修復)
ファスティング中は、細胞が飢餓状態になります。そしてやむを得ず自分の成分を分解してエネルギーを得ます。これが、自己食作用(オートファジー「Auto =自己を」「phagy=食べる」)で、活性化されます。これにより、損傷した細胞成分が分解し、再利用されることで、細胞の修復と更新が行われるのです。
※これは、老化の抑制や神経変性疾患の予防に関与すると考えられているようです。
2.3 免疫機能への影響
炎症反応を抑制し、免疫細胞の活性化を促進します。好中球やリンパ球、自然リーダー細胞など、様々な免疫細胞の数や機能が改善されることが報告されています。このことから、ファスティングは感染症予防や自己免疫疾患の改善に寄与する可能性があります。
2.4 老化抑制効果
細胞の老化を抑制する遺伝子の発現が促進されます。また、ストレス耐性の向上や、ミトコンドリア機能の改善など、老化防御に関連した生理学的変化が起こることが明らかになってきました。これらの作用によって、寿命の延長や年齢関連疾患の予防に寄与すると考えられています。
2.5 ストレス反応への影響
ファスティング中は、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が一時的に上昇するのですが、長期的には低下するのです。また、神経伝達物質の調整や脳内炎症の抑制にもなり、ストレス反応の改善になると考えられています。このようなストレス反応の調節は、うつ病やアルツハイマー病などの予防として期待されています。
3. ファスティングの健康効果
3.1 生活習慣病予防
メタボリックシンドロームや2型糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病の予防に役立つようです。そして体重減少、インスリン感受性の改善、脂質代謝の調整など、様々なメカニズムを通じて、これらの疾患リスクを低減させることができるようです。
3.2 肥満と糖尿病への効果
特に肥満や2型糖尿病の治療においても有効であるとされています。すなわち医師のもと、適切に行われたファスティングは、体重減少、インスリン抵抗性の改善、血糖コントロールの向上など、健康効果が期待できるようです。
3.3 デトックス効果
老廃物や毒素が体内から排泄されることで、デトックス効果が期待されます。
3.4 腸内環境の改善
ファスティング中は消化活動が休止した状態なので、腸内環境のバランスが整い、改善されます。
3.5 免疫力の向上
体内の修復機能が活性化され、自己免疫力の向上や体の抵抗力が高まるとされています。
このように、ファスティングは生活習慣病をはじめ、様々な疾患の予防や治療に効果を発揮する可能性が示されています。しかし、個人差も大きいため、専門家の指導の下で慎重に実践することが重要です。
4. ファスティングの実践上の注意点
4.1 安全と自己管理
健康増進に効果的な一方で、適切な管理をしないで行うと健康被害のリスクを伴います。つまり高血圧や糖尿病など、基礎疾患がある場合は、特に慎重な対応が必要となります。必ず、医療従事者のもと、自身の健康状態に適したスケジュールとプログラムを設計し行うことが重要です。
4.2 副作用とリスク管理
脱水、低血糖、めまい、倦怠感など、様々な副作用が現れる可能性があります。つまり適切な水分・電解質補給、活動量の調整、健康チェックは必須ですので、決して無理をしないようにしましょう。
4.3 個人差について
ファスティングに対する反応には個人差が大きいことを頭に置いておきましょう。なぜならば、年齢、性別、その時々の体調など、様々な要因が影響するからです。そして慣れてない人は初めは期間を短くし、次回以降から徐々に延ばしていくということも考えましょう。
※妊婦、授乳婦、成長期の子供は避けた方がいいでしょう。
4.4 プチ断食
はじめてのファスティングや仕事、家事など休まずに実施したい場合には、短期間のプチ断食がおすすめです。
16時間ファスティング
1日のうち16時間は食事を摂らない方法です。この16時間中は水やお茶などの飲み物は摂取します。16時間ファスティングにより、胃腸の働きが活性化され、代謝が促進されると言われています。また、脂肪燃焼効果が高まり、睡眠の質が向上するなどの効果もあるようです。
1日・2日・朝だけファスティング
1日や2日、もしくは朝だけをファスティングする方法です。このような方法は、食事制限を継続しやすいため、リバウンドのリスクも低いと言われています。
まとめ
ファスティングは、代謝の変化や細胞修復、免疫機能の改善、老化抑制など、幅広い健康効果が期待されています。そして生活習慣病の予防や治療、神経変性疾患への影響など、科学的根拠に基づいた効果が明らかになってきました。一方で、適切な管理なくして行うと健康被害のリスクも伴います。そのため医療従事者など専門家の指導のもと、その状態に合わせて実践することが重要です。すなわち適切なファスティングは、健康の向上に繋がると感じます。